制度とお金 ・ 時期 2:回復期

40〜64歳でも、介護保険は使える脳卒中は「特定疾病」。退院の前に申請しておく

介護保険は65歳からのもの、と思われがちです。でも脳卒中の場合は、40歳から使えます。知らずに使っていない人が多い制度です。この記事では、対象になる人、申請のしかた、使えるサービスを書きます。

全文 約10分短い版 約3分40〜64歳の人向け

最終確認日
2026年10月13日
対象
40〜64歳で医療保険に入っている人
一次情報
厚生労働省・介護保険法 ほか

最初に、結論を書きます

  • 脳卒中(脳血管疾患)は、介護保険の「特定疾病」です。40〜64歳でも、介護保険を使えます。
  • 使うには、市区町村に要介護認定を申請します。入院中から申請できます。
  • 40〜64歳の人の自己負担は、所得にかかわらず1割です。
  • 車椅子や介護ベッドの貸し出し、手すりの工事、訪問介護、デイケアなどが使えます。
  • 退院の前に申請しておくと、家に戻った日からサービスを使えます。

短い版では、結論・申請の流れ・注意・チェックリストだけを表示します。

1. 40〜64歳が使える条件

40〜64歳の人は、医療保険(会社の健康保険や国民健康保険)と一緒に、介護保険料を払っています。この人たちを「第2号被保険者」といいます。

第2号被保険者が介護保険を使えるのは、介護が必要になった原因が、国の決めた16の「特定疾病」のときだけです。

脳血管疾患は、その16の一つです。脳出血、脳梗塞、くも膜下出血などが当たります。

そのうえで、要介護認定で「要支援1・2」か「要介護1〜5」と認められると、サービスを使えます。

交通事故などのけがによる脳の損傷は、扱いが違うことがあります。市区町村の介護保険の窓口に確認してください。

2. 申請から使い始めるまで

  1. 申請市区町村の介護保険の窓口に申請します。家族が代わりに出せます。地域包括支援センターや、病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)に頼むこともできます。40〜64歳の人は、医療保険の保険証(またはマイナ保険証の資格情報)が要ります。
  2. 訪問調査市区町村の調査員が来て、体の状態や日常の動作を聞き取ります。入院中なら、病院に来てもらえます。
  3. 主治医意見書市区町村が、主治医に意見書を頼みます。申請書に主治医の名前と病院を書きます。
  4. 認定原則として、申請から30日以内に結果が届きます。
  5. ケアプランケアマネジャー(要支援の場合は地域包括支援センター)と、どのサービスを使うか計画を作ります。
  6. 利用開始認定の効力は、申請した日にさかのぼります。結果を待つ間でも、ケアマネジャーと相談してサービスを始められることがあります。

退院の日から逆算して、申請する

認定まで1か月ほどかかります。退院の日が見えてきたら、すぐに申請してください。間に合えば、家に戻った日から介護ベッドや車椅子を借りられ、手すりの工事も済ませておけます。退院前のカンファレンスで、ケアマネジャーに同席してもらうこともできます。

状態がまだ変わっている時期に申請すると、実際より軽く出ることがあります。訪問調査では、できない日・できない場面も正直に伝えてください。結果に納得できないときは、区分の変更を申請できます。

3. 使えるサービス

脳卒中のあと、家に戻る人がよく使うものを挙げます。

家での生活を整える

  • 福祉用具の貸し出し:車椅子、介護ベッド、手すり、スロープ、歩行器など
  • 福祉用具の購入:ポータブルトイレ、入浴用の椅子など(1年に10万円まで)
  • 住宅改修:手すりの取り付け、段差の解消、引き戸への交換など(1人20万円まで)

要支援1・2と要介護1の人は、車椅子や介護ベッドを原則として借りられません。状態によっては例外が認められるので、ケアマネジャーに相談してください。住宅改修は、工事の前に申請が要ります。

家に来てもらう

  • 訪問介護(ホームヘルパー):入浴、排せつ、食事の介助、家事の援助
  • 訪問リハビリテーション:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が家に来る
  • 訪問看護、訪問入浴

通う・泊まる

  • 通所リハビリテーション(デイケア):リハビリが中心
  • 通所介護(デイサービス):入浴、食事、機能訓練
  • 短期入所(ショートステイ):家族が休むためにも使えます

40〜64歳の人が、高齢の利用者ばかりのデイサービスになじめないことはよくあります。見学して選べます。若い世代向けのデイサービスがある地域もあります。

書き手より

私は54歳で、介護保険を使っている。要介護は、最初の認定では5だった。いまは4だ。

介護保険で借りているものは、車椅子、ベッド、つっぱり棒、そして「タッチアップ」という立ち上がり用の手すりだ。

家は賃貸なので、工事はしていない。

買ったものは、ポータブルトイレだ。

使っているサービスは、デイケア、訪問看護、訪問リハビリ、訪問歯科だ。

4. いくらかかるか

40〜64歳の人の自己負担は、所得にかかわらず1割です。65歳以上の人のように、2割・3割になることはありません。

ただし、1か月に介護保険で使える量には上限があります。上限は「単位」で決まっていて、1単位はおよそ10円です(地域とサービスで少し違います)。

1か月に使える上限(家で受けるサービス)
認定の区分上限金額のめやす1割のめやす
要支援15,032単位約5万円約5千円
要支援210,531単位約10.5万円約1.1万円
要介護116,765単位約16.8万円約1.7万円
要介護219,705単位約19.7万円約2万円
要介護327,048単位約27万円約2.7万円
要介護430,938単位約30.9万円約3.1万円
要介護536,217単位約36.2万円約3.6万円
  • 金額のめやすは、1単位10円で計算しています。
  • 上限を超えて使った分は、全額が自己負担です。
  • 福祉用具の購入と住宅改修は、この上限とは別枠です。
  • 1か月の自己負担が多くなったときは、所得に応じた上限(高額介護サービス費)があり、超えた分が戻ってきます。
  • デイサービスの食事代、ショートステイの食費・滞在費などは、1割とは別にかかります。

医療費と介護の自己負担を1年分合わせて、上限を超えた分が戻る制度もあります(高額医療・高額介護合算療養費)。医療費の上限は医療費の上限を知るに書きました。

5. 障害福祉サービスとの関係

脳卒中で障害が残ると、身体障害者手帳を取り、障害福祉サービス(ホームヘルプなど)を使うこともできます。

ただし、介護保険と障害福祉に同じようなサービスがある場合は、介護保険が先になります。40〜64歳で特定疾病の人も同じです。

注意:介護保険だけで足りないときは、上乗せを相談できます

介護保険の上限では必要な介護が足りないとき、介護保険にないサービスが必要なときは、障害福祉サービスを合わせて使えることがあります。重度の人ほど、ここが大事です。扱いは市区町村によって違うので、障害福祉の窓口とケアマネジャーの両方に相談してください。

就労移行支援や就労継続支援のように、介護保険にない障害福祉サービスは、介護保険とは関係なく使えます。

6. 医療保険のリハビリとの関係

退院したあとのリハビリは、病院の外来(医療保険)で続けるか、デイケアや訪問リハビリ(介護保険)で受けることになります。

脳卒中のリハビリは、医療保険では日数に上限があります。要介護認定を受けている人は、その後のリハビリを介護保険で受けるのが基本になります。

どちらで、どれだけ受けられるかは、主治医とケアマネジャーに確認してください。詳しくは「180日の壁」のあと、リハビリはどうなるのかに書きました。

7. 確認しておくこと(チェックリスト)

チェックは、この端末の中だけに残ります。印刷して相談に持っていくこともできます。

注意:このページは医療上の助言をしません

この記事は制度の説明です。認定の結果や使えるサービスは、市区町村が判断します。どのサービスやリハビリが合うかは、主治医や担当の療法士、ケアマネジャーに確認してください。制度は改定で変わるため、確認印の日付と下の一次情報もあわせて確認してください。

出典(一次情報)

最終確認日 2026年10月13日

  1. 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
    https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
  2. 介護保険法(第7条 定義、第27条 要介護認定)e-Gov法令検索
    https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
  3. 堺市「要介護度別・区分支給限度基準額」(2026年8月24日更新)
    https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/fukushikaigo/kaigo/service-use/kind-cost/kaigoservice/gendokijyungaku.html
  4. 文京区「介護保険の利用者負担割合」(第2号被保険者は1割)
    https://www.city.bunkyo.lg.jp/b020/p000570.html
  5. 障害者総合支援法(第7条 他の法令による給付等との調整)e-Gov法令検索
    https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000123

次に読む