制度とお金 ・ 時期 3:退院の準備

住宅改修と福祉用具、使える制度借りる・買う・工事する。それぞれに使える制度がある

車椅子で家に戻るには、用具と、家の手直しが要ります。その費用の多くは、介護保険や障害福祉の制度で賄えます。ただし、申請の順番を間違えると使えなくなるものもあります。この記事では、何をどの制度で、どの順番で進めるかを書きます。

全文 約12分短い版 約3分介護保険の認定を受けた人を中心に書いています

最終確認日
2026年10月13日
対象
介護保険・障害福祉の制度
一次情報
厚生労働省・自治体 ほか

最初に、結論を書きます

  • 介護保険で、車椅子・介護ベッド・手すりなどを借りられます(自己負担1〜3割。40〜64歳の人は1割)。
  • 手すりや段差をなくす工事は、介護保険で20万円まで。工事の前に申請しないと使えません。
  • ポータブルトイレや入浴用の椅子は、介護保険で1年に10万円まで買えます。
  • 体に合わせて作る車椅子などは、障害者手帳があれば「補装具」として作れることがあります。介護保険の人も対象になりえます。
  • 介護保険で足りない分は、障害福祉の制度や、市区町村独自の助成で補えることがあります。

短い版では、結論・工事の手順・注意・チェックリストだけを表示します。

1. 3つの制度の全体像

使える制度は、大きく3つあります。介護保険が先で、足りない分をほかの制度で補う、というのが基本の順番です。

用具と工事に使える制度
制度対象の人主なもの窓口
介護保険要支援・要介護の認定を受けた人用具を借りる、買う、住宅改修ケアマネジャー、市区町村の介護保険の窓口
障害福祉障害者手帳を持っている人など補装具(体に合わせた車椅子など)、日常生活用具、住宅改修の上乗せ市区町村の障害福祉の窓口
自治体独自自治体ごとに違う住宅改造の助成など市区町村

40〜64歳の人も、脳卒中なら介護保険を使えます(40〜64歳でも、介護保険は使える)。

2. 借りる(福祉用具の貸与)

介護保険では、次のような用具を、毎月のレンタル料の1〜3割で借りられます。

  • 車椅子と、そのクッションなどの付属品
  • 介護ベッド(特殊寝台)と、その付属品
  • 床ずれ防止用具、体位変換器
  • 手すり、スロープ(どちらも工事が要らないもの)
  • 歩行器、歩行補助つえ
  • 移動用リフト(つり具を除く)
  • 自動排泄処理装置、認知症の人の徘徊感知機器

借りる良さは、体の状態が変わったら、取り替えられることです。回復していく時期や、合うものがまだわからない時期に向いています。

レンタル料は、1か月に介護保険で使える量(区分支給限度基準額)に含まれます。訪問介護やデイサービスと同じ枠を分け合います。

要支援1・2、要介護1の人の注意

この人たちは、車椅子、介護ベッド、床ずれ防止用具、体位変換器、移動用リフトなどを、原則として借りられません。ただし、状態によっては例外として認められます(例外給付)。必要なときは、ケアマネジャーに相談してください。

借りるか買うかを選べるもの

令和6年4月から、固定用のスロープ、歩行器(車輪のないもの)、杖(松葉づえを除く)は、借りるか買うかを選べるようになりました。長く使うなら、買った方が安くなることがあります。ケアマネジャーや福祉用具の専門相談員から説明を受けて選びます。

3. 買う(福祉用具の購入)

肌に触れるものなど、人が使ったものを借りにくい用具は、介護保険で買えます(特定福祉用具販売)。

  • 腰掛便座(ポータブルトイレ、便座を高くするものなど)
  • 入浴補助用具(入浴用の椅子、浴槽の手すり、浴槽内の椅子など)
  • 簡易浴槽、移動用リフトのつり具
  • 自動排泄処理装置の交換できる部品、排泄予測支援機器
  • 借りるか買うかを選べるもの(上の節)
10万円1年に買える上限4月から翌年3月まで
1〜3割自己負担40〜64歳は1割
指定の店で買ったものだけほかの店は対象外

都道府県などの指定を受けた事業者から買ったものだけが対象です。いったん全額を払い、あとから戻ってくる方式が基本です。はじめから自己負担分だけを払えばよい方式(受領委任払い)を使える市区町村もあります。

4. 工事する(住宅改修)

介護保険では、次の6種類の工事に、1人20万円まで使えます。自己負担が1割なら、20万円の工事で2万円です。20万円を超えた分は全額が自己負担です。

  1. 手すりの取り付け
  2. 段差の解消(スロープ、敷居を低くするなど)
  3. 滑りにくい床・移動しやすい床への変更
  4. 引き戸などへの扉の取り替え
  5. 和式から洋式などへの便器の取り替え
  6. 上の工事に伴って必要になる工事

20万円は、何回かに分けて使えます。引っ越した場合や、介護の必要な程度が3段階以上重くなった場合は、もう一度20万円まで使えます。

工事の手順

  1. 相談ケアマネジャーに相談します。退院前なら、病院の療法士にも家の状況を見てもらえると確実です。
  2. 見積もり工事業者に見積もりを取ります。ケアマネジャーなどが「住宅改修が必要な理由書」を書きます。
  3. 事前申請工事の前に、市区町村に申請します。
  4. 工事市区町村から認められてから、工事を始めます。
  5. 支給申請工事後の写真と領収書を出して、介護保険の分を受け取ります。

注意:工事を先に始めると、介護保険は使えません

退院に間に合わせようと急いで工事を始めると、あとから申請しても認められません。退院の日が決まったら、すぐにケアマネジャーに相談してください。間に合わない場合は、工事の要らない手すりやスロープを先に借りる方法もあります。

賃貸住宅の場合は、家主の承諾が要ります。退去するときに元に戻す必要があるかも、先に確認してください。

5. 障害福祉の制度(補装具・日常生活用具)

補装具:体に合わせて作るもの

障害者手帳を持っている人は、障害者総合支援法の「補装具」として、体に合わせた車椅子、電動車椅子、装具、重度障害者用意思伝達装置などを作れます。

  • 自己負担は原則1割。月の上限は37,200円で、住民税が非課税の世帯は0円です。
  • 本人または世帯の誰かの住民税(所得割)が46万円以上だと、対象外です。
  • 申請先は市区町村の障害福祉の窓口です。医師の意見書や、専門の機関の判定が要ることがあります。

介護保険の人でも、補装具を使えることがあります。車椅子は、原則として介護保険のレンタルが先です。でも、介護保険で借りられるのは標準的な既製品です。麻痺や失調、姿勢を保つことの難しさなどで既製品が合わないと判断されれば、補装具として作れます。

厚生労働省は2026年9月の通知で、介護保険の人でも補装具を使える場合があることを、窓口でていねいに説明するよう自治体に求めています。窓口で「介護保険だから」とだけ言われたら、身体に合わせる必要があることを伝えてください。

日常生活用具:市区町村が決めているもの

市区町村は、障害のある人の暮らしを助ける用具を給付したり、貸したりしています(日常生活用具給付等事業)。対象の用具と金額は、市区町村ごとに違います。

  • 入浴補助用具、特殊寝台、移動用リフトなど(介護保険にあるものは、介護保険が先)
  • 携帯用会話補助装置など、話すことを助ける用具(構音障害のある人に関係します)
  • 住宅改修費(介護保険の20万円に上乗せする形のこともあります)

市区町村独自の助成

高齢者や障害者向けに、住宅の改造費を独自に助成している市区町村があります。介護保険の20万円では足りない工事に使えることがあります。所得の条件や、工事の前の申請が要るかは、市区町村ごとに確認してください。

6. 選ぶときに気をつけること

  • 入院中に試す:車椅子やベッドは、病院の療法士と一緒に、実際に乗り移って試してから決めます。
  • 家の寸法を測る:玄関、廊下、トイレの入り口の幅。車椅子が通れるか、回れるか。
  • 介助する人の体も考える:ベッドの高さ、手すりの位置は、介助する家族の動きやすさにも関わります。
  • まずは借りる:合うかわからないものは、借りて使ってから、買うか作るかを決めます。
  • 本人の「こうしたい」を伝える:自分でトイレに行きたい、外に出たい。目的がはっきりすると、選ぶものが変わります。

書き手より

私は、車椅子、ベッド、つっぱり棒、立ち上がり用の手すりを、介護保険で借りている。いまの月々の自己負担は、約4,000円だ。家は賃貸なので、工事はしていない。

ポータブルトイレは買った。介護保険の購入の補助を使ったので、払ったのは約10万円ぐらい。もともとの値段は、20万円ぐらいだった。

最初は、ポータブルトイレに移るとき、つっぱり棒を使っていた。訪問リハビリの理学療法士さんのすすめで、「タッチアップ」という立ち上がり用の手すりに変えた。

また、玄関先には手すりが1本ある。デイケアの送迎のとき、室内用ではない、外用の車椅子に乗り換えるためのものだ。デイケアの理学療法士さんと相談して付けた。

7. 確認しておくこと(チェックリスト)

チェックは、この端末の中だけに残ります。印刷してケアマネジャーとの相談に持っていくこともできます。

注意:このページは医療上の助言をしません

この記事は制度の説明です。どの用具や工事が体に合うかは、担当の療法士やケアマネジャーに確認してください。対象になる用具、金額、手続きは、市区町村によって違うことがあります。申請の前に、必ず窓口で確認してください。

出典(一次情報)

最終確認日 2026年10月13日

  1. 北九州市「介護保険住宅改修費の支給」(20万円、事前申請、3段階・転居でのリセット)
    https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/16800539.html
  2. 松山市「福祉用具購入費の支給(特定福祉用具販売)」(年10万円、令和6年4月からの選択制)
    https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kaigohoken/kaigohoken/hokensa-bisu/zaitaku/yougu_sikyu.html
  3. 横浜市「軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付について」
    https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/fukushi-kaigo/kaigo/shinsei/keido_reigai.html
  4. 石川県「介護保険と補装具費」(既製品が合わない場合の補装具費の支給)
    https://www.pref.ishikawa.lg.jp/rihabiri/documents/3-2kaigohokentohosouguhi.pdf
  5. 静岡県「補装具費支給制度」(自己負担、上限、所得の条件)
    https://www.pref.shizuoka.jp/kenkofukushi/shogaifukushi/shintaishogai/1079229.html
  6. 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1542」(2026年9月10日。補装具費支給制度と介護保険制度の適用関係)島根県掲載
    https://www.pref.shimane.lg.jp/medical/fukushi/kourei/kaigo_hoken/low/kaigosaishin/kaigosaishin1491.data/Vol1542.pdf

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