制度とお金 ・ 時期 1:発症・急性期

医療費の上限を知る高額療養費のしくみと、窓口で払いすぎないための手続き

脳卒中で入院すると、医療費は数十万円から数百万円になります。それでも、窓口で払うお金には1か月ごとの上限があります。この記事では、その上限がいくらか、払いすぎないために何をするかを書きます。

全文 約10分短い版 約3分70歳未満の人を中心に書いています

最終確認日
2026年10月13日
対象
令和8年8月〜令和9年7月の診療分
一次情報
厚生労働省・協会けんぽ ほか

最初に、結論を書きます

  • 1か月の医療費の自己負担には、上限があります。「高額療養費制度」といいます。
  • 年収 約370万〜約770万円の人なら、医療費が100万円かかっても、自己負担は約9万3千円です(70歳未満)。
  • マイナ保険証で受診すれば、窓口の支払いも、はじめから上限までになります。申請は要りません。
  • 住民税が非課税の世帯は、マイナ保険証でも事前の申請が要ります。
  • 食事代と差額ベッド代は、上限の対象外です。

短い版では、結論・計算・チェックリストだけを表示します。

1. 高額療養費とは

1か月に医療機関の窓口で払った額が上限を超えたとき、超えた分を保険が負担する制度です。

ここでいう1か月は、その月の1日から末日までです。入院した日から30日ではありません。

会社の健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度。どの保険にも、同じしくみがあります。

上限の額は、年齢と所得で決まります。

2. 上限はいくらか

令和8年(2026年)8月の診療分から、上限が引き上げられました。下の表は、その新しい額です。

70歳未満の上限(令和8年8月〜令和9年7月の診療分)
区分年収のめやす1か月の上限4か月目から1年の上限
ア約1,160万円〜270,300円 +(医療費 − 901,000円)× 1%140,100円168万円
イ約770万〜約1,160万円179,100円 +(医療費 − 597,000円)× 1%93,000円111万円
ウ約370万〜約770万円85,800円 +(医療費 − 286,000円)× 1%44,400円53万円
エ〜約370万円61,500円44,400円53万円 ※
オ住民税非課税36,900円24,600円29万円
  • 「医療費」は、保険がきく医療費の総額(10割の額)です。窓口で払った3割の額ではありません。
  • 「4か月目から」は、多数回該当(第5節)のときの上限です。
  • ※ 区分エのうち、年収 約200万円以下と確認できた人は、1年の上限が41万円です(払い戻しは令和9年8月以降)。
  • 年収はめやすです。会社の健康保険は「標準報酬月額」、国民健康保険は「所得」で区分が決まります。

自分がどの区分かは、保険証に書いてある保険者(協会けんぽ、健康保険組合、市区町村の国保の窓口など)に聞けばわかります。

70歳以上の人の上限を見る

70歳以上の人は、外来だけの上限(個人ごと)と、入院を含む上限(世帯ごと)が分かれています。

70歳以上の上限(令和8年8月〜令和9年7月の診療分)
区分外来(個人ごと)入院を含む(世帯ごと)4か月目から1年の上限
現役並み Ⅲ—270,300円 +(医療費 − 901,000円)× 1%140,100円168万円
現役並み Ⅱ—179,100円 +(医療費 − 597,000円)× 1%93,000円111万円
現役並み Ⅰ—85,800円 +(医療費 − 286,000円)× 1%44,400円53万円
一般22,000円(年 216,000円)61,500円44,400円53万円
低所得 Ⅱ11,000円(年 96,000円)25,700円24,600円29万円
低所得 Ⅰ8,000円15,700円—18万円

協会けんぽの表をもとにしています。後期高齢者医療制度(75歳以上)の人は、お住まいの都道府県の広域連合か市区町村で確認してください。

3. 自分の上限を計算する

計算式は長く見えますが、やっていることは単純です。区分ウの人で、医療費が100万円かかった月を例にします。

窓口で3割を払うと → 300,000円

上限 = 85,800円 +(1,000,000円 − 286,000円)× 1%
   = 85,800円 + 7,140円 = 92,940円

→ 払うのは 92,940円です。差の 207,060円は保険が負担します。

上限を計算する(70歳未満・3割負担の場合)

区分を選ぶ
1か月の医療費(10割の額)を選ぶ
3割を払うと
—
1か月の上限
—
保険が負担する分
—

めやすの計算です。4か月目からの上限(多数回該当)、食事代、差額ベッド代は含みません。

4. 窓口で払いすぎないために

制度があっても、手続きをしないと、窓口ではいったん3割を請求されることがあります。あとから戻ってきますが、数十万円を立て替えるのは大きな負担です。

マイナ保険証なら、申請は要りません

マイナ保険証で受診すると、医療機関がその場で区分を確認します。窓口の支払いは、はじめから上限までになります。事前の申請は要りません。

オンライン資格確認に対応した医療機関の場合です。ほとんどの病院は対応しています。

マイナ保険証を使わない場合

保険者に「限度額適用認定証」を事前に申請します。届いた認定証を、病院の窓口に出します。

協会けんぽの場合、有効期間は申請した月の1日から最長1年です。

住民税が非課税の世帯は、必ず申請します

区分オ(低所得)の人は、マイナ保険証を使う場合でも申請が要ります。申請するのは「限度額適用・標準負担額減額認定証」です。これがあると、入院中の食事代も下がります。

入院したら、家族がやること

病院の会計窓口か、医療ソーシャルワーカー(相談室)に「高額療養費の上限で計算してほしい」と伝えてください。マイナ保険証を使ったか、認定証があるかを、そこで確認できます。

5. 脳卒中の入院で、知っておくこと

脳卒中の入院は、急性期の病院から回復期リハビリテーション病院へ移り、数か月続くことがあります。そのとき関係してくるルールが4つあります。

月をまたぐと、別々に数えます

上限は暦の1か月ごとです。たとえば2月20日から3月10日まで入院すると、2月分と3月分で、上限がそれぞれ1回ずつかかります。

病院が変わると、別々に請求されます

上限の計算は、病院ごと(入院と外来も別)に行われます。同じ月に急性期の病院から回復期の病院へ転院すると、それぞれの病院で上限まで請求されることがあります。

70歳未満の人は、1つの病院で払った額が21,000円以上なら、ほかの病院の分と合算できます。合算して上限を超えた分は、申請すると戻ってきます。家族の分も、同じ保険なら合算できます(世帯合算)。

入院が長引くと、4か月目から上限が下がります

直近12か月のうち、上限に届いた月が3回あると、4回目からは上限が下がります。これを「多数回該当」といいます。区分ウ・エの人なら、4回目からは 44,400円です。

脳卒中で入院が数か月続く人は、これに当たりやすい制度です。

注意:保険が変わると、回数は数え直しになります

多数回該当の回数は、同じ保険の中でしか数えません。会社を辞めて国民健康保険に入った、家族の扶養に入った、というときは、1回目から数え直しです。退職を考えるときは、この点も確認してください。

1年の上限が、新しくできました

令和8年8月から、8月から翌年7月までの1年間にも上限ができました。区分ウ・エの人は 53万円です。月ごとの上限で払った額の合計がこれを超えると、超えた分が戻ってきます。

協会けんぽでは、この1年の上限の申請は令和9年8月から受け付ける予定です。それまでの領収書は捨てずに取っておいてください。

6. 上限の対象にならないお金

次のお金は、高額療養費の上限とは別にかかります。入院が数か月になると、ここが積み上がります。

  • 入院中の食事代(1食ごとに決まった額。住民税非課税の世帯は減額があります)
  • 差額ベッド代(個室など、本人が希望した場合)
  • 保険がきかないもの(病衣やタオルのレンタル、おむつ、日用品、文書料など)
  • 先進医療など、保険外の医療

差額ベッド代は、病院の都合で個室に入った場合などは請求されない決まりがあります。同意書にサインする前に、理由を確認してください。

7. 払いすぎたお金を取り戻す

窓口で上限を超えて払った場合、保険者に申請すると戻ってきます。転院で2つの病院に払った場合も同じです。

  • 申請先:保険証に書いてある保険者
  • 期限:診療を受けた月の翌月1日から2年
  • 戻るまで:診療月から3か月以上かかります

国民健康保険では、対象の世帯に市区町村から申請書が届くことがあります。健康保険組合によっては、申請しなくても自動で払い戻すところもあります。自分の保険の扱いを確認してください。

戻るまでのお金が苦しいとき

協会けんぽには高額医療費貸付制度があります。戻ってくる見込み額の8割を、無利子で借りられます。国民健康保険にも、市区町村によって同じような貸付があります。

8. これから変わること

令和9年(2027年)8月から、所得の区分がさらに細かく分かれる予定です。具体的な額は、これから政令で決まります。

また、年収 約200万円未満で住民税がかかる世帯は、4か月目からの上限(多数回該当)が引き下げられる予定です。

決まった時点で、この記事を更新し、確認印の日付を改めます。

9. 確認しておくこと(チェックリスト)

チェックは、この端末の中だけに残ります。印刷して病院に持っていくこともできます。

注意:個別の金額は、保険者に確認してください

この記事は制度の説明です。区分や上限額は、加入している保険によって扱いが違うことがあります。自分の区分と金額は、保険証に書いてある保険者に確認してください。制度は改定で変わるため、確認印の日付と下の一次情報もあわせて確認してください。

出典(一次情報)

最終確認日 2026年10月13日

  1. 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月31日更新)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
  2. 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/001726232.pdf
  3. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費」
    https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/index.html
  4. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「限度額適用認定証」
    https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/001/index.html
  5. 港区「令和8年8月から高額療養費の自己負担限度額が変わります」(国民健康保険の区分)
    https://www.city.minato.tokyo.jp/kyufu/kurashi/hoken/kenkohoken/k-kyufu/kougakuhenkou.html
  6. 杉並区「8月から高額療養費制度が改正されます」
    https://www.city.suginami.tokyo.jp/s035/news/27125.html

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