制度とお金 ・ 時期 1:発症・急性期
会社員なら、傷病手当金を確認する休んでいる間の収入と、1年6か月のあいだに考えること
脳卒中で倒れると、仕事は長く休むことになります。会社の健康保険に入っている人には、その間の収入を支える「傷病手当金」があります。この記事では、いくら・いつまで受け取れるか、退職するときに何に気をつけるかを書きます。
- 最終確認日
- 2026年10月13日
- 対象
- 協会けんぽ・健康保険組合の加入者
- 一次情報
- 協会けんぽ・健康保険法 ほか
→最初に、結論を書きます
- 会社の健康保険に入っている人が病気で休み、給与が出ないとき、給与のおよそ3分の2が支給されます。
- 休み始めて4日目から、通算で最長1年6か月です。
- 条件を満たせば、退職したあとも受け取り続けられます。退職日に出勤しないことが条件の一つです。
- 同じ病気で障害厚生年金を受けるようになると、差額だけになります。
- 国民健康保険の人(自営業など)には、原則としてこの制度はありません。
短い版では、結論・計算・注意・チェックリストだけを表示します。
1. 傷病手当金とは
会社の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)に入っている人が、病気やけがで働けず、給与が出ないときに支給されるお金です。
受け取れるのは、次の4つがそろったときです。
- 仕事以外の病気やけがで、療養のために休んでいる
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間を含めて、4日以上仕事に就けなかった
- 休んだ期間に、給与が出ていない
入院中だけではなく、退院して自宅で療養している期間も対象です。
仕事中や通勤中に倒れた場合は、労災保険の対象になることがあります。労働基準監督署に相談してください。
国民健康保険には、原則として傷病手当金がありません。自営業やフリーランスの人は、民間の保険(就業不能保険など)に入っていないか確認してください。
2. いくら受け取れるか
1日あたりの額は、次の式で決まります。
1日の額 = 直近12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2
「標準報酬月額」は、保険料を決めるための月給の区切りです。残業代や通勤手当も含めた額に近くなります。給与明細の健康保険料から、会社の担当者に聞くとわかります。
| 標準報酬月額の平均 | 1日の額 | 30日分 |
|---|---|---|
| 20万円 | 4,447円 | 133,410円 |
| 26万円 | 5,780円 | 173,400円 |
| 30万円 | 6,667円 | 200,010円 |
| 36万円 | 8,000円 | 240,000円 |
| 44万円 | 9,780円 | 293,400円 |
1日の額を計算する
- 1日の額
- —
- 30日分
- —
めやすの計算です。給与が一部出た日は、その分が差し引かれます。
- 計算は、30で割った額の10円未満を四捨五入し、3分の2を掛けて1円未満を四捨五入しています(協会けんぽの計算例と同じ方法)。
- 健康保険に入ってから12か月に満たない人は、自分の平均と、協会けんぽ全体の平均(支給開始日が令和7年4月1日以降の人は32万円)の、低い方で計算します。
- 健康保険組合によっては、上乗せ(付加給付)があります。
傷病手当金に、所得税はかかりません。
休んでいる間に給与が一部出た場合は、その分を差し引いた額が支給されます。給与の方が多ければ、その日は支給されません。
3. いつから、いつまで
- 1〜3日目待期といいます。連続して3日休むと成立します。有給休暇や土日・祝日も、この3日に数えます。この3日分は支給されません。
- 4日目から支給が始まります。有給休暇を使った日は、給与が出ているので支給されません。
- 通算 1年6か月支給を始めた日から、支給された日数を通算して1年6か月分まで受け取れます。
途中で復職しても、残りの日数は消えません
令和4年1月から、期間は「通算」になりました。復職して給与が出た日は数えません。同じ病気でまた休むことになったら、残りの日数から再び受け取れます。
脳卒中は、急性期の入院、回復期の入院、自宅での療養と、休む期間が長くなります。いつ1年6か月に届くかを、早めに会社か保険者に確認しておくと、その後の準備ができます。
会社の就業規則で決まっている「休職できる期間」は、傷病手当金の期間とは別です。休職期間が先に終わる会社もあるので、就業規則も確認してください。
4. 休んでいる間も、かかるお金
傷病手当金の全額を、生活費に使えるわけではありません。休んでいる間も、次のお金はかかります。
- 健康保険料と厚生年金保険料(本人負担分)。給与から引けないので、会社に振り込むよう求められることが多いです。
- 住民税。前の年の所得にかかるので、休んでいても請求されます。
- 入院中の食事代、差額ベッド代など。医療費そのものには上限があります(医療費の上限を知る)。
保険料をどう払うかは、会社によって違います。休み始めたら、会社の担当者に確認してください。
5. 退職するとき
復職できずに退職する人もいます。次の条件を満たしていれば、退職したあとも、残りの期間の傷病手当金を受け取れます。
- 退職日まで、健康保険に続けて1年以上入っていた(任意継続や国民健康保険の期間は数えません)
- 退職日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態だった
!注意:退職日に出勤すると、その後は受け取れません
あいさつや引き継ぎのつもりでも、退職日に出勤すると「働ける状態だった」とされます。退職の翌日からの傷病手当金は支給されません。退職日の過ごし方は、事前に会社と相談してください。
また、退職後にいったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても、支給は再開しません。
退職後の健康保険
退職すると、次のどれかに入ります。それぞれ保険料が違うので、比べて選んでください。
- いまの健康保険を続ける(任意継続。最長2年)
- 国民健康保険
- 家族の健康保険の扶養
傷病手当金も「収入」として数えます。受け取っている額によっては、家族の扶養に入れないことがあります(障害のある人の基準は年収180万円未満)。保険が変わると、医療費の「多数回該当」の回数も数え直しになります。
失業給付は、すぐには受け取れません
雇用保険の失業給付は、「働ける状態」の人のためのものです。傷病手当金を受けている間は受け取れません。
病気で30日以上働けないときは、ハローワークに受給期間の延長を申請できます。延長は最長3年です。働けるようになったときに、失業給付を受け取れるよう残しておけます。
6. 障害年金との関係
同じ病気で障害厚生年金を受けられるようになると、傷病手当金は原則として止まります。
ただし、障害厚生年金の額(障害基礎年金を合わせた額)を360で割った額が、傷病手当金の1日の額より少ないときは、その差額が支給されます。
!注意:あとから返金を求められることがあります
障害年金は、決まるまでに数か月かかり、さかのぼって支給されます。その期間に受け取っていた傷病手当金は調整され、返金を求められることがあります。障害年金がまとまって振り込まれたら、すぐに使わずに、保険者からの連絡を待ってください。
障害年金を請求できるのは、原則として初診日から1年6か月後です。脳卒中で麻痺が残った場合、それより早く請求できることがあります。傷病手当金の期間中に年金が決まることもあるので、この調整は多くの人に関係します。
それでも、障害年金の請求は進めてください。傷病手当金は1年6か月で終わりますが、障害年金は、その後の生活の土台になります。
退職後に老齢年金を受け取る人も、同じように差額だけの支給になります。
7. 申請のしかた
「健康保険傷病手当金支給申請書」を、保険者(協会けんぽの支部、健康保険組合)に出します。申請書には、3つの欄があります。
- 本人:振込先や休んだ期間など
- 会社:出勤したか、給与を出したか
- 医師:仕事に就けない状態だったか
1か月ごとなど、区切って申請するのが一般的です。最初の申請は、会社の担当者に相談すると、会社がまとめて出してくれることもあります。
入院中で本人が書けないときは、家族が代わりに書いて出せます。病院の相談室(医療ソーシャルワーカー)にも相談できます。
申請の期限は、休んだ日ごとに、その翌日から2年です。期限を過ぎた日の分は受け取れなくなるので、ためずに出してください。
書き手より
倒れたとき、私は2人で会社を経営していた。保険は社会保険で、傷病手当金は1年半、支給された。
お金のことで最初に困ったのは、この状態がいつまで続くのか、わからないことだった。果たして社会に復帰して、またお金を稼げるのか。それが見えなかった。
加えて、私は自分で給料を決める立場にあった。社会保険料を抑えるために、どちらかと言うと、給料を低めにしていた。そのため、傷病手当金も、それに合わせて低くなった。
8. 確認しておくこと(チェックリスト)
チェックは、この端末の中だけに残ります。印刷して会社や病院との相談に持っていくこともできます。
!注意:個別の判断は、保険者と会社に確認してください
この記事は制度の説明です。支給されるか、いくらになるかは、加入している保険者が判断します。健康保険組合には独自の上乗せや手続きがあることもあります。退職や年金の判断は、保険者、年金事務所、社会保険労務士にも確認してください。
出典(一次情報)
最終確認日 2026年10月13日
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html - 全国健康保険協会(協会けんぽ)「よくあるご質問:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/ - 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金と年金の調整」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/file/shoute_nennkinntyousei.pdf - 健康保険法(第99条 傷病手当金、第104条 資格喪失後の継続給付、第108条 年金との調整、第193条 時効)e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 - ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(受給期間の延長)
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html