発症した日のこと
朝起きて、いつものように朝食を食べ、シャワーを浴びた。
すると、目の奥に、ひびが入ったような感じがした。体がふらつき、倒れそうになった。
急いで体を拭いて、リビングに倒れ込んだ。
なにせ、仕事に行かなければならない。1時間ぐらい寝ていたら治るものだと思っていた。
ところが、まったく良くなることはなかった。
目が覚めたような気がしたときは、おそらく呼吸困難だったのだろう。
灯油を吸い上げるポンプのようなものが、のどから出てきて、周りの空気を全部吸い取ろうとしていた。
自分では、「ああ、これはもう死ぬな」と思った。
私は前々からずっと、自営業をやって、好き勝手に生きてきた。だから、「いつ死んでも悔いはない」と言っていた。
実際に、そういう場面を目の前にしても、間違いなく「まあ、しょうがないか」という感覚だった。
悔いがあるとか、やり残したことがあるとか、そういう気持ちにはならなかった。
ただ、よく言う走馬灯とか、お花畑とか、三途の川とかは、まったく現れなかった。
そうこうしているうちに、母が救急車を呼んだ。そして、病院に搬送された。
救急車に乗ったときのことは、なんとなく覚えている。「仕事の相方に、今日は仕事ができないと連絡しないといけない。でも、電話がない」。そんなことを、ぼんやり考えていた。
病院に運ばれてからは、とにかく、ものすごい金属音が頭の中に鳴り響いていた。たぶん、あれはMRIの金属音だったのだろう。
医者から、こんな言葉をかけられたような気がする。
「脳出血ですね。ちょっと、出血したところが厄介ですけど、看護師さんの言うことをちゃんと聞いていたら、治りますから」